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農業の世界に新風を巻き起こせ!湘南の若き“農業プロデューサー”

 “農業プロデューサー”―――あまり聞きなれないこの肩書きで、今注目を浴びている若者がいる。湘南の豊かな環境で育てた豚を、一躍ブランド豚に押し上げた、(株)みやじ豚代表取締役・宮治勇輔さん、30歳。起業を夢見て経営学を学んだ末、3年前に実家の養豚業を受け継いだ。以来それまでになかったノウハウやアイデアを駆使して、畜産の世界はもちろん、農業の世界に新しい風を起こそうとしている。そんな彼が歩んできた起業までの道のりや、農業への熱い想いを聞いた。

農業を“かっこよくて・感動があって・稼げる”3K産業に

  そもそものきっかけは学生時代にあった。神奈川県藤沢の小さな養豚農家に長男として生まれた宮治さんは、大学在学当時、友人を自宅に招いてバーベキューパーティーを開催。 そこで友人たちから「こんなにうまい豚は食べたことがない!」という言葉を受けて感動したという。「初めてうちの豚ってそんなに旨かったのかと気づき、同時に親父もいい仕事していたんだなぁとつくづく感じました」。しかし喜びも束の間、続けて友人の口から飛び出した「この豚、どこに行けば買えるの?」という何気ない質問に、彼はまったく答えることができずショックを受けた。帰宅後、父親に聞いてもわからないという。手塩にかけ育てた美味しい豚がどのように流通され、誰が食べているのか生産者自身が把握できないでいる現状――。これが、彼が農業について考えるきっかけとなった最初の出来事だった。
 大学卒業後、大手人材派遣企業に就職。営業、企画、プロジェクトの立ち上げなど様々な業務を任され、キャリアを積んでいく中で、やがて起業を夢見るようになる。以来毎朝出社前に独学で経営学などの勉強に励んだ。そんな折、宮治さんを農業へと導く2度目のきっかけが訪れる。勉強の一環として農業についても調べるようになり、その中で農家を取り巻く厳しい実状を知った。

 「作物の価格はすべて規格と相場で決められる。生産農家の名前が消されて流通するので、お客さんからの声も届かない。これでは駄目だと。後継者不足が問題になっていますが、これは後継者不足ではなく、後継者がやりたがらない農業の仕組みそのものに問題があるのだと気づかされました。普通ならそこで、あ〜跡継ぎにならなくて良かったと思うところでしょうが、僕の場合、実家の養豚業を何とかしたいという想いが膨らんだんです。従来の農家は生産から出荷までしか関与しませんでした。しかし生産からお客さんの口に届けるまでを、ひっくるめて農業と捉えたらどうだろう。言うなれば農業をプロデュースするとう仕事。これまで実家を継ぐなんて考えたこともなかったけれど、これならかっこいいじゃないか、自分もやってみたいなと思うようになりました。そして従来の一次産業のイメージである“きつい・きたない・かっこ悪い・くさい・稼げない・結婚できない”という6K産業を、“かっこよくて・感動があって・稼げる”3K産業に変えてみせようと、実家に戻ることを決意したんです」

一から百までトータルにできる、それが理想の百姓像

 宮治さんは農業にかける想いを父親に伝えた。「お前の言っていることは地に足がついてない、理想論だ」と、当初はまったくとりあってもらえなかったが、その後も説得を続け、やがて「そこまで言うなら勝手にやれ」と、事実上の許しを得る。そしてこの日から、彼は野望への第一歩を踏み出すことになった。会社を辞めて実家に戻ったはいいが、お金もコネもノウハウもない中で一体何から始めたらいいのか――。そこでまずは、月に1回のメールニュースの配信と、バーベキューの開催に着手。「メールニュースも当初はドキドキしながら配信したものです。友人や元同僚など知り合い950人くらいに送りました。『会社を辞めて実家の養豚業を継ぎました。かっこよくて、感動があって、稼げる、3K産業にしてみせます。応援してください。つきましてはバーベキューを開催するのでぜひ食べにきてください』と。するとたくさん返事をいただきました。なかには、『ITベンチャーをやるなら「ふーん」という気持ちだけれど、農業をやるなら応援してやる』といった声もあり、励まされましたね」。大学時代と同様、バーベキューではその味にみんなが感動してくれた。さらにそこで『みやじ豚』の虜になった人たちが口コミでその美味しさを広め、気がつくと瞬く間にお客さんが増えていった。まさにバーベキューマーケティングだ。
 その後も『みやじ豚』をブランド化するためのプロデュース活動に注力。バーベキューやレストランでのイベントの開催、講演などで各地を飛び回る。口コミや各種メディアに取り上げられることで『みやじ豚』の認知度が高まる中、2006年9月に(株)みやじ豚を設立し、代表取締役に就任した。現在、養豚の現場は父親の昌義さんと弟の大輔さんに託し、自身は『みやじ豚』のプロデューサー兼PRマンとして奔走。まさに三人三脚の日々だ。

 「みやじ豚をたくさん売って自分のところが潤うだけでは満足できません。あくまでも、かっこよくて、感動があって、稼げる、3K産業にすることこそが僕の使命」と語るように、自社の業務にとどまらない活動も展開している。湘南地域の地域活性化を目的としたNPO法人『湘南スタイル』の運営に参画し、茅ヶ崎市から事業を受託。茅ヶ崎市の食と農業のポータルサイト『おいしい茅ヶ崎』を作った。また、実家の農業を継ぎたいけれどやっていく自信がない…そんな若者をサポートすべく、『農家の子せがれネットワーク』を立ち上げ、現在仕組み作りに取り掛かっている。
 「百姓という言葉を、百の仕事ができないと農業はできないという意味合いで使用して、最近では誇りを持ってあえて自分を百姓と呼ぶ人たちが増えています。僕が考えるこれからの新しい百姓とは、農業の知識はもちろん、流通からマーケティング、営業、商品開発やレストランのプロデュースまで、まさしく一から百までトータルにできる人。僕はそんな百姓の第一人者になろうと決めたんです」。
餌と育てる環境にこだわり、美味しさをとことん追求。味には絶対の自信があると胸を張る。さらにいつの日か、自社の事業だけでなく農業全体に自信と活気を呼び戻し、誰もが「百姓をやっています!」と胸を張れるような産業にしたい――。それが彼の夢だ。
 

動画

みやじ豚.COM http://www.miyajibuta.com/

これから農業をめざす皆さんへメッセージ


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